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フィグ・アジェスト(c00731)のブログ。キミはワタシを知ってるかい?
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先ずは普通の、白い生地で餡子が包まれたものを選ぶ。
この生地がふわふわとして、パンと似ているけど、
また違う甘さをしているのが面白いと思う。
勧めるからには勿論だけれど、これは、好き。

深めた笑みのそのままに舌鼓を打っていれば、
当たり前の事を言われる。

「食べることは楽しいこと。
 美味いものなら更に良くて、加えてキミとだよ?」

当たり前には、当たり前を。
笑顔で返せば何やらまた険しい顔になったけれど、
この主は照れの一つも見せてみれば良いと思う。



不意に呼ばれた名に、こくりと、白黒の欠片を飲み下す。

なぁにと首を傾げ、釣られて杯を取り、

― 知っている。

少しだけ温るまった茶を、ひとくち含む。

即座に返す言葉を思い浮かべて、けれど口を開けなくて。
代替のようにただ、主を見つめた。
珍しいかおだと、想う。
だって、苦いものが混じっても、それは殆ど笑顔のかたちであるから。
綺麗だと、想う。


― 覚悟している。

― キミは、翻したがらないな。

― そう、


……それは、存外、快い、ことばで。

総てを信じている、それは何て空々しいことばだろうね。
総てを知っているの?
総てを受け止めるの?

知っているものを信じて、
信じられないものを信じられないと信じるのよ。

ワタシの、総て。
そんなもの、自分にも信じられない。よく、分からないから。

総てを信じない、それなら、とても分かり易くて、居心地が良い。

みんな、身勝手な考えでしょう。
ワタシはとうに、狂っているわ。
でも、これだから

ワタシは、ワタシを信じない主を、信じてる。


信じるなんて、ややっこしくてよくは分かりゃしない。
でも、
使って欲しいと思った相手として、間違っていないということ。
これは、ひとつ、信じていることだと思うから。


笑いたいような、気がする。
泣きたいような、気がする。
どちらでも、同じかも知れない。


杯を、置いた。
厭な音を、立てはしなかったろうか。
手元を見ないで扱うには、こういう食器はどうにも華奢だ。

知っているよ
分かっているよ

― それでも、やっぱり。嫌いと言われるのは、好きじゃない。

自分はいつもの笑みのままで在れているだろうか。
「いつも」なら思わないことを考えて、
これしか出来る事がないから、只管相手を見つめる。
息すら詰めて、ことばを待つ。


ほんとうに、息が止まるかと思った。


しなくてもいい、というのは。
此方の自由意志に任された、という事だと、
そう思う事にしている。いつも。

だから、信用するし、  (ワタシなりのカタチで)
だから、好きになるし、 (     )
だから、付いて行く。  (…何処までも、何時までも。)

そもそも、

― とうに、約したこと。

― 命に背く犬は、居なかろうよ。


様々に考えが入り混じって、
自分のあたまでは訳が分からなくなりそうで、
そうしている内に逸らされた視線を、惜しいと、思った。


視線が逸らされたまま、言葉が継がれる。


― 嗚呼、キミは、ほんに素直でない。


思わず飛び付きたくなったのはどうにか堪えて。
堪えきれぬ喜悦はそのまま表情に上げて。
いつの間にか渇いていた喉を、杯に残っていた茶で潤す。
一息に干した杯を置けば、軽い音。
硝子の奏でる音はこの陽気に涼やかで、悪くないと。


作法なんてよく知らないから、適当に腰を上げる。
そして茶会の主人へ、期待してるよぅと、いつもの調子で言い放ち。

横顔であったけれど、此方の表情は分かるだろう。
ワタシは、分かりやすいそうだから。


テーブルを回ってほんの何歩か、進んだ。

主の前へ。


得物の切っ先を、手前の胸に差し向けるのだっけ。

御足押戴いて、爪先に口付けるのだっけ。

どうにも、ややこしいこと。
でも少しだけ、刀剣を持つ子が羨ましいと思った。
無手の自分は、魔獣を身の内に伴うばかり。

だからただ、単純に。
膝を折り、頭を垂れて。犬らしく、伏すように。

星の御伽話の日の契約を、今一度。


「アナタの言葉の、そのままに。」


こうして口頭で約するのは、そういえば初めてだろうか。


「必ず生きて帰る事を、誓うわ。」


ワタシからは、主の顔が見えない。
表情が、見て取れない。


「ワタシはアナタの飼い犬よ。
 信じてなくても、嫌いでも、飼っていてくれる限り、ずっと。
 我が主、アナタの下に。アナタの、傍に。」


あれほどあたまの中がぐちゃぐちゃとしていたのに、
今は不思議なくらい、凪いでいる。


「ねぇ」

つと顔を上げて、視線を捕まえられるまで待つ。

下僕の態度として、発言として、
常々から不遜だろうと、一応の自覚はある。
あるけれど、自分はこういう生き物で、
特に直せとも言われないから、このまま。

真っ向から主を見据え、にぃと、牙を剥くように笑んでみせた。
とびきりに不遜で、不敵な笑顔を刷いた。


「アナタに所有される限り、死んでなんて、あげない。」


犬は、犬らしく。
(要らなくなれば、捨てれば良いよ)(死ぬなと思えば、飼うと良いよ)
(嗚呼犬の分際で、精一杯の虚勢と、取引未満の取引を)

嗚呼、とてもとても穏やかで、楽しいお茶会だね?



言うだけ言って立ち上がり、埃を立てないようにと軽く裾を払った。


何事も無かったように席に着こう。
ほら、どれも美味いというのに、菓子は殆ど減っていないじゃないか。
もっとお上がりよと勧めなくてはね?

ううんその前に、空いた杯に茶を注ぎ足そう。
大丈夫、もう手は震えていない。

茶会が落ち着いたら、邸を見たいと強請ろうか。
使用人にと言われたような気がするけれど、
邸の案内なら、主人がするべきだと思う。


(くるくる変わる様子は、呆れられる、ような気がする)
(だけどそんなのは、いつもの事)
(次があるとしても、今は今で楽しまなくては)

(何より)
(少しだけ怖かったのを、僅かでも気付かれたくなかったから)
(怖がる、のは。自分らしくないと思う)

(嫌われたい訳なんか無い。好かれたいに、決まってる)
(でも、本当に厭うのなら)
(そもそも此処まで許さないと、そういうひとだと思うから)

(そんな不確かなものを、信じてる)

(主が為とこの命を使うのは、望む処だと云うのに)
(アナタに殺されるのは、望む処だと云うのに)

(どうやらワタシは、つまりこの主に捨てられるのが、怖いのか)
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プロフィール
HN:
フィグ
年齢:
34
性別:
女性
誕生日:
1990/10/17
自己紹介:
 この作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『エンドブレイカー!』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
 イラストの使用権は作品を発注したPLに、著作権は『山田2』絵師に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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