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ほんとうに、ほんとうに、愛おしい子だった。
殺してしまうのが勿体無いくらいに。
だからこそ徹底的に跡形も無く希望も絶望も無く蹂躪し尽したいくらいに。
落ちてしまわなければ、その体温の失せるまで、ずっと抱きしめていたかった。
どうして敵なのだろうね、だからこそいとしいね。
時折、ラビシャンの転がり落ちた方を、見つめてしまう。
満たされ切った笑顔で、死へ転がり落ちた獣。
幾つも殺してきた。
幾つも傷を受けてきた。
でも、こんな子は居なかった。
きっと、同じ表情で戦っていたのだと想う。
今までで一番恋をしたのに。
もう死んでしまった。
わたしは生きているのに。
勝ち負けは、終るまで分からないこと。
でも、星仰ぐ以上自分が生き残ることは、決まっていたから。
また、見てしまう。
どこを向いても同じような光景なのに。
吹き飛ばされたときに、彼方此方を打ち付けた。
避けるのもままならない大きさというのは、余りないから。
楽しくって転がりながら笑っていたら、土くれを食うてしまった。
どこかしら折れたかも知れないけど、その内どうにかなるだろう。
血が出ているのは、蛇の牙だったろうか。
馬鹿でかいから、真っ向から刺さった訳でもないのによく切れた。
ラビシャンに押し倒されたときは、
まぁ頭もぶつけたけどとてもぞくぞくした。
腕が回らなくて、背中にしか腕の届かなかったのが本当に悔やまれる。
腹に叩き込めば、あたたかなものに爪届いたかも知れないのに。
服を纏わないというのが、獣だからと奇異に見ていたけれど、
体温の直接触れられる、それがひどく愛おしかった。
一撃叩き込んで、仲間の一撃に吹き飛ばされるのを見ながら立ち上がり、
さぁもう一撃と思ったのに。
とうとう死んでいくのが、
愛されて愛されて殺されていくのが、
狂おしく妬ましかった。
名前を聞いておけば良かった、と。今になって思う。
あの子、としか呼ぶ手立てが無い。
きっと向こうも、此方の名前を知らない。
こうも愛し合ったのに、名前すら呼べないなんて悲しいだろう?
嗚呼、でも、少し呼ばれた時に、あの子が聞いていたら良いと想う。
ああ、うらやましい。
わたしもあいされたい。
ああ、ねたましい。
ねぇふゆはどんなあじがした?
あいしているよ、かわいいかわいい、わたしのうさぎ。