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また、動くものがあった。
暗くなって、それから口吻の方から漏れ差す光があるから、恐らく朝。
また無謀な鳥が来たか、さぁ狩るかと思えど、
その影は幾らも小さく。
あんまりにも頼りなく小さく。
向こうの薔薇色へ赴くのを腰を浮かせながら見守り、けれど椿事なく。
それから。
惑うように、けれど真直ぐ此方へ寄るのは
「…ひよこ……?」
そういえばと記憶を手繰れば、
昨晩だか今朝だかいつだか、
餌を狙ったのかこの蛇は、梢に齧りついていた様な気がする。
特に得られたものも無い様子だったけれど。
これを狙っていたのか。
果たして蛇が得たのか、送り主が意が得たのか。
何かを銜える雛へ、舌を鳴らして手を差し出す。
血がこびり付いたままの右手を出しかけて、
気付いて左手を拭って出した。
首をひとつ傾げる様に、気の緩むのを感じた。
掌に落とされた、銀色と金色のリボンに其々結われた其れ。
ビー玉ひとつ分くらいの小さな包み。
匂いを嗅ぎに掲げてみれば、小さく折り畳まれた薄紙を見つける。
「…また、あの子は」
囁きながら、
隠しに足した銀色が、鳴る筈の無い鈴音を響かせた気がした。
何処か誇らしげな雛を、カーチフで作った巣に入れて。
銀と金を持って、後背へ幾歩か。
此方へ向いた視線に、人差し指を口前に立て。
許可を取らず、半歩隣に腰を降ろした。
怪訝な、というよりも疲労と不機嫌の綯い交ぜな視線の誰何に、
掌に並べた小さな包みを差し出してみせる。
「銀色と金色、どっちが良い?
たぶん、薄荷と、蜂蜜。」
飴みたい、と。告げて。
血臭混じりでも、あまいものの匂いだから鮮やかで、
きっと合ってる。とおもう。
そういえば、
傍に居たのに数日かぶりに交わす言葉に、
頬が緩んでいく。
帰れずに居てもしあわせのある自分は、愚かだろうと思う。
けれど帰る事は決まりきっているから、何も、問題は無い。
ひとりでなくて、良かった。