[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
近くで動く気配に、目蓋を開ける。
誰か動けるようになったかと思えば、それは星霊で。
清い光に目を細めるも、背後から寄るそれを追い返す。
唯一で、あるけれど。
絶対で、あるけれど。
偶に、馬鹿だと思う。
誰も彼も満身創痍で、そりゃあ回復は要るだろう。
けれど一応の安全である此処で、殊更回復する必要が何処に、と。
そういうのは、自分が元気になってから気にすれば良いのに。
でもそれが、一度で無いから。
少しだけ、歯噛みしながら他の影の元へ送り出した。
自分も、馬鹿だと思う。
向かうひかりに照らされ、木片の転がっているのが見えた。
そういえば、と思い出して、
血糊で強張る指を折り、日付を数えた。
さいあくだ、と珍しく心中で呟いてしまった。
傷塗れの血塗れで、こんな場所で迎えるとは。
勝利持っての依頼遂行で始められたがせめての幸いか。
帰ればあるのになぁと思いながらも木片引き寄せ、
魔獣の爪で削り始める。
大体は此れで済むけれど、それでも直刃の様には切れはしない。
ナイフの一つも持ち歩こうか、とぼんやり思う。
手作業やら考え事は、痛みの訴えを無視するには適している。
見本も無く、あんまりに荒削りで何がモデルか分かったものではないが、
どうにか花に見える気がしたので、良しとした。
時間を掛けすぎて、日付が変わったら惜しい。
既に、今が何時やら分からないが。
再びのひかりを頼りに、人影を検めた。
あああそこに横たわる、と判じて、立ち上がる。
膝が、笑いそう。
ハンマは重いからと、その場に横倒しに置いて。
ゆるくにぶく、歩み寄った。
近くで見れば、見事な勝負の出来そうな襤褸け具合で。
擦れた声でも届く程度に寄ったところで、一息ついた。
それから木片と、一言ばかりを投げて。それだけ。
帰ればきっと、待ち受けるものがあろうだろうし、
きっと願われるから良い夢を見るだろうし。
ただ少し、共に赴いただけの幾許があったら良いと、思っただけだから。
また、元居た処へ腰を降ろす。
こんな所で上機嫌にもなれないけれど、
顔を向けずとも不機嫌そうなのが分かるのに、
僅か苦笑が零れた。
ああ、生きているのだと。
皆で帰れれば、良かったのだけれど。
せめて帰せれば、良かったのだけれど。
自分ばかり帰る事にならなくて、良かったと、想った。