[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
強張る背筋をぐっと伸ばし、
軋む腕を左右確かめて、
よくよく折れていた膝を叱咤した。
万全とは言いかねるが、これならば帰れよう、とおもう。
直にこの蛇とも別れるのか、と考えれば何処か名残惜しい。
折角、とてもとても強い敵であったから。
このまま斃せないで別れるのが、とても名残惜しい。
互いに生きていれば、また見みえる事もあるだろうかと、
情を込めて軽く「地面」を叩く。
散々動き回っていたから、
此れくらい意に介さないのは知っているけれど。
――次に逢ったら、蒲焼き。
賭けるような積りで、約を押し付けた。
次いで、存外長く顔を合わせ続けることになった
冒険仲間達の影も見渡す。
互いにそれどころじゃなかったからと、没交渉だったけれど。
充分に戦えない状態で居合わせるに、
戦線を同じくした相手であるのはこうも安心出来るのかと。
気配を覚えている、戦い方を知っている、
そしてまぁ、たぶん、そうそう敵にはならないだろうと。
食うにあぐねた者もなく。
恙無しと、思っている。
向こうがどうと思っていたかは、知らないけれど。
知れたら楽しかろうと、思うけれど。
そうまで思って、昨日の一時を思い出した。
睨まれるのはいつもの事だから、想定内で。
いつも以上に射抜く視線だったのは、
自分にとっては悦ばしいだけで。
けれど問われた選択肢は、想定外だった。
正直、ほんとうに驚いた。
主が所有物を如何しようと、尋ねる必要すらない事。
選択肢は無限であって、けれど選ばれる一つしか有り得ないのだから。
ただ、他者の居る空間では嫌がりそうなのに、と。
明かされる前に、冗句であるとは直ぐに知れた。
微かに伝わってきた温度に、僅かだけ身を硬くしたのは隠し通して。
そうも平常ならぬ言を溢すほど、と少しばかり、心配にもなった。
だから尚、力になれと気分も変われと、勧めた。
――すっきりするのが良かったのかしらね?
久し振りの会話は、それだけのことで。
でも。
犬だけれど。
かあいらしくもないと判っているけど。
――あの子みたいのが好いのかしら。
武力であれば良いのだと、思っている。
あるいは少しばかり、このままの性格で。
だから関係無いと言えば、それきりで、あるけれど。
――…むぅ。
釈然としないのを紛らわすように、金色一粒。
久し振りのあまさの前には、渋い顔なんてしていられなかった。