フィグ・アジェスト(c00731)のブログ。キミはワタシを知ってるかい?
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陽が。
「ご覧よ、久方ぶりの朝陽サ。
夜も静かで良いけれど、しっかと動くにゃ朝からが良いねぇ」
(村ならば羊らが鳴くだろうか、そう零したのはきっと
郷愁よりも空腹からで)
「…ふ、どうにか歩けるか。いや駄目か。
傷やら怪我やらの前に、寝っぱなしであるのが萎えさせてるような?
うん、脚は折れてやしなかろう。罅は知らんがそう支障は判らんわ」
(シェルターであった岩陰から這い出し、左右に揺れながら立ち上がる。
一歩を踏み出すには、未だ心許無いところ)
「届く範囲の傷は舐めて、あとはもう届かない。
となれば残す手段は一つだけ。
あはっ、効果の効きを自制出来んのは手前の面倒見れる内に入るのやら」
(上衣をめくり上げる様に、腹の傷を塞ぎかけていた瘡蓋を
布地と共に引き剥がす。
淡紅色の奥に深紅を覗かせる傷口。とろりと、薄い血が垂れ出す)
「あははははははははは!いったいねぇ、嗚呼痛い、うふふ。
ワタシは未だ痛いよ、未だ生きてるよ、あははっ。
此処に、あのバルバの爪が、ふふ、」
(廃虚でひとり、傷口をなぞりながら哄笑する様は
狂女以外の何者にも見えず)
「嗚呼、さぁてまどろみは此れきりに。
応えておくれよ、ワタシの可愛い子。」
(絶えぬ笑みはそのままに、乞うかの口調で呟いて。
魔獣戦士の女が使うは――ベルセルクブラッド)
ほんに、これを使うと気持ちの良いこと。
っち、そこの痛みは罅がいってたのか。
右足が痛くなくなった。
肩の傷が塞がった。
「…しょうのない子だ、そこじゃない」
(岩陰での数日で取り戻した熱力を費やし、
早く戦えるようになれと内なる獣を叱咤する)
おや、手がよく動く。レイピアでも受けた時に、どうかしてたのか。
左足も調子の良さそうな。
…嗚呼。
(魔獣の腕で、腹の血をぐいと拭う。
奥底を覗かせんとしていた其処は、今では
他よりピンクがかっているだけの、真新しい皮膚が)
「善く出来た、やっぱりキミは良い子だ」
(豪気に笑い、右腕におどけて口付け、魔獣化を解いた。
其処に立つは、ちょっと汚れた格好ではあるけれど、ただの娘で)
(確かめるように一歩踏み出し、支障なしと見て取るや
更に数歩進め、軽く鍛錬の真似事のような事を始める)
(途中運動によるものでない汗をもかくが、ハンマーの取り回しも少し)
(一閃、二閃。
三度振るったところで、今まで自分の居た岩陰に振り下ろす)
(骨の砕けるのと違う、くぐもった音)
「…戻るかね」
(打ち砕く感触を確かめると、ひょいとハンマーを肩に担ぎ
ほんの蟲退治から戻るような気安さで、数日前に来た道を戻っていく)
(少し道の方に戻れば、後は簡単なことだった。
未だ、戦闘の跡と、王へ導いたサインが残っていたから)
(得物を支える逆の手の中。
からからと乾いた音を立てるそれを、此処にあると確かめるように
指の腹で撫でながら、歩いていく)
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プロフィール
HN:
フィグ
年齢:
34
性別:
女性
誕生日:
1990/10/17
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