フィグ・アジェスト(c00731)のブログ。キミはワタシを知ってるかい?
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
(アクスヘイム中層、とある町外れ。
野山を間近に望む其処に立つ、一件の酒場。
二階を宿屋として開いている、立地以外は有り触れた其処)
「…なに、やっとの思いで帰って来たってぇのに
此処の親父は借主に戸を開かんつもりかえ」
(しょぼくれた格好の、ハンマーを担いだ女が
幾度も戸を叩くが、閉ざされた向こうからは物音一つなく)
(やがて、忠実に役割を果たしていた酒場の戸は、暴力の前に砕け散る)
(途端に中から飛び出すは赤ら顔の髭親父。
日中であるから、勿論酒を呷っている訳ではないのだが)
「おおぉい小娘何やってるんだ!
ドアは、開けるもの!壊すものじゃねぇぞ?!」
「だったらお開けよこの狒狒爺が」
「え、鍵かかってた?」
「………キミの頭の中を調べるよう、村の狼に言付けておくよ」
(いやぁ悪ぃねぇ!と木片と化した扉を余所に、
何が可笑しいか腹を抱える親父)
(数日見ない間にも全く変わらない親父に呆れ、
女は嘆息吐きつつ二階へと階段を上がる)
(疲れがあろうと、狂乱狂いから呵呵大笑の株を奪う奇異な人物。
酒場兼宿屋の店主は、思い出したように疑問を投げる)
「そーいや小娘は、どうしてそんな汚ぇ格好してんだ?」
「…ふふ、ステキな相手と命賭けて貪り合ってたのよ」
「また『お遊び』かよ。ちったぁマトモになれよなぁ?俺みたいにさ!」
(笑う店主を尻目に、ばたんと閉まる個室の戸)
「そもそも小娘は、年上を敬う事を覚えるべきだな」
「人里に戻ってからの方が疲れた気がするのは、気のせいかねぇ…」
(ほんにあれは、と目を回し)
「ま、あれは放っといて用意よ。
ふふ、長く空けてすまんかったねぇ」
(質素な室内。とろりとした目線で愛しむは
古ぼけた室内を白く染め上げる遺物の数々。
寝台の上に転がされていた一つを拾い上げ、嬉しげに頬ずりする)
「キミらに仲間が増えたのよ、仲良くおし。
あはっ、いとし子の増えるはいつもどうして嬉しいのだろう」
(常々傍に置く頭骨と再会を祝い、今度はそっと窓辺に置いて
自分の身なりを片付けにかかる)
(不在の間に満たされていた水瓶に、店主の奇異な印象を改めた)
(着物を、着れるものと使えるもの、捨てるものよと選り分け投げて)
(ささやかな水音)
(白から赤茶に染まった布を、選り分けた上に投げて)
「これでよし、と。
ふむ、暑くなったねぇ。これなら髪も直に乾きそう」
(漸く人心地を取り戻した女は、
自室の前に置かれていた小包の存在を思い出す。
届いたものはいつもそうして置かれるから、習慣として拾い上げていたけれど。)
「肉屋には頼んでいないし、古物屋にも言いつけてない、
他に何処に骨を頼んだっけか。
ふぅん?ワタシの名前しか書いてないのね?」
(不思議に思えど不審がる事はなく。
何か判らないなりに丁寧に、封を開ける)
(短い文面と、軽く柔らかなピンク色に笑みが深まる)
「おや、拙いねぇ。折角戻ってきたのに日が暮れるわ。
ふふ、旅団には何て顔を出そう。行きがてら、手紙を頼まなくっちゃ」
(今まで部屋に無かったようなそのピンク色を、寝台に置こうか窓辺に置こうか考えて、
嗚呼用途は正しくと呟き、隠しにそっと仕舞った)
(引き換えるまでは、その柔らかさを連れても良いだろうと、また笑う)
(そして気の逸るまま、箱から取り出した書き物道具を並べていく)
PR
この記事にコメントする
プロフィール
HN:
フィグ
年齢:
34
性別:
女性
誕生日:
1990/10/17
ブログ内検索